① ベトナム語はキン族の母語です。

ベトナムには54の民族がいると言われていますが、多数民族であるキン族(ベト族とも言う)の母語がベトナム語であり、ベトナム国内の公用語という位置づけになっています。

② アルファベット表記です。

ベトナム語はアルファベットを使用し、その上下に「声調記号」や「母音記号」をつけて表記します。F、J、W、Zの4文字はなく、DのほかにĐがあります。読み方は日本語のローマ字読みと似ているものもありますが、そうではない独自の読み方がたくさんあります。

 

③ 昔は漢字を使っていました。

1000年以上におよぶ中国支配の影響で、長い間ベトナムの公式の文字は漢字でした。10世紀ごろにはベトナムで誕生したチュノム(chữ Nôm)という独自の漢字もありましたが、普及しませんでした。その後西洋のカトリック宣教師たちの活動やフランス植民地を経て、アルファベット表記のベトナム語が公式の文字となりましたが、漢字の影響で、今でもベトナム語の語彙の約6割は漢字に置き換えられ、日本語と似た音も多数存在します。

chú ý (注意) チュー イー
ý kiến (意見) イー キェン
kết quả (結果) ケッ クゥアー
đại sứ quán (大使館) ダイ スー クゥアン

 

④ 6つの声調があります。

中国語(北京語)には4つ、タイ語には5つの声調がありますが、ベトナム語はなんと6つ! 単語内の音の上がり・下がり(イントネーション)が変化するだけで同じ綴りでも意味が変わります。ベトナム語が「まるで鳥のさえずりのよう」と言われるのはこの豊かな声調が理由かもしれません。

声調一覧  a  à  á  ả  ã  ạ mua(買う) mùa(季節) múa(踊る)

⑤ 12の母音があります。

「ベトナム語は発音が難しい」と言われるのは、上記の声調に加えて母音の多様さゆえ。日本語には「ア・イ・ウ・エ・オ」と5種類しかない母音ですが、ベトナム語には「アが3つ、イが2つ、ウが2つ、エが2つ、オが3つ」と合計12種類あります。やはり母音が違うだけで同じ綴りの単語でも意味が変わってしまうので、区別が必要です。

母音一覧  a  â  ă  i  y  u  ư  e  ê  o  ô  ơ mua(買う)  mưa(雨)

 

⑥ 文法はSVOです。

文法は基本的には英語と同じで、【主語+動詞+目的語】の形をとります。

例)
 Tôi ăn phở. (私・食べる・フォー) トイ アン フォー

 

 ⑦ 単語は一切変化しません。

発音で私達を苦しめるベトナム語ですが、文法はいたってシンプル。実はベトナム語では、名詞でも動詞でも単語が一切変化しません。例えば動詞では、その文の主語が単数か複数か、一人称か二人称か三人称かによって後に続く動詞が変わることもなければ、動詞の過去形・未来形といった変化もありません。過去や未来を表したいときには、次のように専用の単語を追加すればOKです。

例)
Tôi sẽ ăn phở. (私・「でしょう」の意味合い・食べる・フォー) → 未来形
トイ セー アン フォー
Tôi đã ăn phở. (私・「ました」の意味合い・食べる・フォー) → 過去形
トイ ダー アン フォー

⑧ フランス語の影響も見られます。

漢字の影響が強いベトナム語ですが、100年弱に及んだフランス植民地支配の影響で、フランス語から外来語としてそのまま定着した単語も結構あります。次の単語は何を表すと思いますか?

例)
cà phê カー フェ
sô cô la ソォ コ ラ
xà bông シャー ボン

 

⑨ 地域による差異があります。

ベトナム語と一口に言っても、当然ながら地域によって多少の違いがあります。単語は同じだけど読み方が違う場合もあれば、単語が丸ごと異なる場合もありますが、それぞれの土地の言語を話しても通じ合うことができます。

例)
発音の違い:dạy 北部の読み方「ザイ」 南部の読み方「ヤイ」
単語の違い:コップ 北部 cốc コッ(ク) 南部 ly リー

 

⑩ 「あなた」と「私」がたくさんあります。

英語ではすべて Youと Iで済んでしまう二人称や一人称ですが、ベトナム語はこれが多様。相手が自分より年上の男性ならanh(アイン)、女性ならchị(チ)、年下の男女なら共にem(エム)…といったように、相手と自分との関係性において二人称を使い分け、同時に自分を指す一人称も変化します。一度にすべて覚えるのは大変なので、テキストでは二人称のみを変化させ、一人称を便宜的にtôi(トイ)で統一しているものが多いです。